相続税の負担を軽減する2つの贈与方法
相続税を減少させる方法には、「贈与する」「財産の評価を下げる」の2つがあります。今回は贈与の手法について考えてみましょう。
相続税の基礎控除が縮小し対象者が拡大
無料法律税務相談所で受ける相談のなかで、最も多い内容は『相続税を安くしたい』ではないでしょうか。
相続税の基礎控除が縮小されたことで対象者が広がり、多くの方が気になさっていらっしやるようです。
ひと口に「贈与」と言っても、その方法が2つあることをご存じでしょうか。それぞれにメリット・デメリットがありますので、どちらを選択した方が良いのか、じつくり検討する必要があります。
じっくり時問をかけて、確実に節税
1つは『暦年贈与』です。特に届出などは不要で、通常は自然とこちらが選択されます。
毎年1 10万円以内の贈与であれば課税されない「贈与税非課税枠」をコツコツと使い、時間を味方につける方法です。ただし非課税枠を超えると、贈与した金額に応じて10% 〜5% の贈与税が発生します。財産をあげた方が亡くなる前3年以内の贈与については相続財産に加算されてしまいますが、長い期間多くの方へ贈与し続ければ、節税効果は非常に高くなります。
相続税が増税される前の平成24年度は29万人の利用でしたが、直近では37万人の方が利用しており、注目が高まっています。
早期に多額を移転したい
一方「相続税が基礎控除以下」という方は、もう1つの方法である『相続時精算課税』を検討なさってはいかがでしょうか。
暦年贈与と比べて適用要件が細かいですが、これを活用することにより、一度に多額の財産を相続人へ移すことができます。
特徴的なのは、基本的に節税にはならないこと。と申しますのは名称の通り、相続時に贈与した分を精算する制度なので、贈与した財産をいったん相続税の計算に加算し直さなければなりません。それでは、どんな点がメリットとなるのでしょうか。精算課税制度では、相続税の計算に加算し直す財産の価額は、「贈与時」の価額になります。
つまり、将来確実に価額の上昇が見込まれるような土地などの財産を生前に贈与することで、価額上昇分の相続税を節税することができます。またアパートなどの収益物件を贈与した場合、毎月の家賃収入はその物件の所有者が受け取りますので、贈与をした方の所得税の圧縮効果があり、ひいては相続税も軽減されます。
さらに「居住用財産の3000万円の特別控除」 を適用するために自宅を親子共有とすれば、親子でそれぞれ3000万円の特別控除を受けることができます。
注意点としては、精算課税制度を一度選択すると、二度と暦年贈与の方法を使うことができません。どちらのケースが長期的視点で有利に働くかを見定めるには、何よりも現状把握が大切になります。
暦年贈与
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相続時精算課税
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贈与をする人
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誰でもOK
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60歳以上の親
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贈与を受ける人
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誰でもOK
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20歳以上の子・孫
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非課税枠
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贈与を受ける人ごとに年間110万円以内
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贈与をする人ごとに相続があるまで500万円以内(父母を合わせれば5000万円となる)
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相続時の財産の評価
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贈与時
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贈与時
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メリット
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デメリット
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税負担なしには多額の贈与ができない。贈与の証拠を残すのが手間。
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財産を使い切ってしまったり、価格が下落して相続税の納税が困難になるリスクがある。
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相続時の控除
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贈与税額の控除あり
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贈与税額の控除あり
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相続時の還付
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還付されない
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還付される
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